ビッグデータ × AI × 機械学習
- 金融テクノロジーを良い方向に変革する融合

本論文は、ビッグデータ、AI、機械学習が金融テクノロジーにどれだけ浸透しているかを説明し、そのネガティブな部分についても触れます。

 

原題:「Big data, artificial intelligence and machine learning: A transformative symbiosis in favour of financial technology」

 

著者: 

  • Duc Khuong Nguyen(IPAG Lab, IPAG Business School, Paris, France/International School, フランスIPAGビジネススクール(パリ) IPAGラブ/ベトナム国家大学ハノイ校インターナショナルスクール)
  • Georgios Sermpinis(グラスゴー大学アダム・スミス・ビジネス・スクール)
  • Charalampos Stasinakis(同上)
 

出版元 European Financial Management  2022年4月13日

 

研究方法

164本の先行研究および世界4大監査法人の報告書を要約。

 

主な内容

  • 「ビッグデータ」には「V」で始まる4つの特徴がある。

1) Volume(量)。処理が簡単で静的な情報。例えば、顧客の信用履歴。

2) Velocity(速度)。変化の激しい情報。例えば、SNS上の情報。

3) Variety(種類)。様々な形態の情報。例えば、音声、ビデオ、画像。

4) Veracity(正確さ)。疑わしいデータ。例えば、整合性のないデータベース。

  • 銀行におけるビッグデータの使用例は、金融市場の高頻度データに基づくリアルタイムの株式市場の分析情報、適応的市場と消費者心理不正取引の検知と防止リスク分析など。
  • 銀行は、新たなサービスの創出には、自前で開発しようとするよりもフィンテック企業と協業する必要があり、ビジネス・インキュベーターの支援が戦略上で重要。
  • 信用スコア算出と融資の面で、AIと機械学習はフィンテックを大幅に推進する。
  • 保険会社はAIを使用して、顧客体験の向上販売やサービスの促進保険金請求の処理の迅速化、個々のリスクに基づく保険の引き受けの精度アップを図っている。
  • AI搭載ロボアドバイザーは、簡単で迅速なデジタルローンの利用を可能にする。
  • ロボアドバイザーのパイオニアであるウェルスフロント社とベターメン社は、目を見張るようなパフォーマンスを出している(例、2年間のリターンが年率換算で5%超)。
  • 不動産評価もビッグデータとAIによって変わってきている。
  • 公認会計士はAIの使用により、単調な手作業よりも、データに基づく判断に注力できるようになる。
  • 規制テクノロジー(レグテック)も重要。多くの組織はコンプライアンス、監査、規制、評判リスクに対応するために膨大な予算と時間を投入しているが、AIと機械学習を使って規制のモニタリング、本人確認、活動/取引のモニタリングすれば、費用効果が高い。

 

一方、AIをめぐる懸念は、

  • 人間の能力が低下してしまう。
  • 雇用が減る。
  • 責任の欠如。(もしAI搭載プラットフォームで投資して損が出たら、いったい誰の責任か?)
  • 偏見が増幅されてしまう。
  • サイバーセキュリティ
  • 組織においては、データ科学者が幅を利かせるようになり、創造性が失せ、惰性が続く。

結論

フィンテックにおけるビッグデータ、AI、機械学習の威力は強力である。懸念要素を克服して活用できるかどうかは、金融業界、規制当局、政治家、教育者の手に懸かっている

 

個人的な感想

毎日のようにマスコミからAI関連のニュースを聞くので、大学の研究者たちからも、客観的な見解を得たかったのです。しかし、特に新たな発見はなく、結論も月並みの感があります。計量分析みたいのものをやってほしかったのですが、おそらくデータの蓄積が十分でないのでしょう。もっともレグテックのことを私は初めて知りました。

 

 

 
 
 
 

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