収益の内、市場の変動に依存せず、運用者のスキルによって得られた部分。
幅広く分散投資すると固有リスクは減りますが、アルファも小さくなります。
「excess return」とも言います。
アルファは、ベンチマークを上回る部分とも言えます。私募ファンドは公開されないためベンチマークがありません。代用として公募の投資対象のインデックスが使用されます。
アルファが期待されるのはヘッジ・ファンドやプライベート・エクイティなどであり、その反対に、盛んに取引されている上場株式や債券は、市場が効率的なのでアルファがゼロに近いと言われます。
米国では単に「manager」、欧州では「alternative lender」と呼ばれています。
リスクやその他の点で共通の特性をもつ資産の種類。
リスク特性が互いに異なるアセットクラスをポートフォリオに組み込めば分散投資ができます。
運用成果と関係なく毎年ファンドが投資家に請求する費用。
「management fee」とも言います。
通常、プライベート・エクイティの場合は出資約束金額(コミットメント)の〇%ですが、ダイレクト・レンディングの場合は事業会社への実際の貸出金額の〇%となります。
市場全体の動きに対する資産価格のボラティリティ。ボラティリティが「1」より高ければ市場より変動性が高いことを意味します。
計算式は、相関係数×当該資産の標準偏差÷市場の標準偏差。
アセットクラスの1つ。
金融資産は「エクイティ」、「フィクスト・インカム」、「キャッシュ」の3つに分類でき、その中のフィクスト・インカムはさらに国債/政府機関債と「クレジット」の2つに分類できます。
国債/政府機関債は時間価値への投資、クレジットは信用リスクへの投資です。
クレジットには以下の4種類があります。
投資適格債、買収目的のシンジケートローン(担保付優先債権)、ハイイールド債(劣後債)に分類できます。これらの全てに高い流動性があり、借り手は大企業です。
ダイレクト・レンディングを指します。
レバレッジ、セクター、劣後によるリスクにより、高リスクであり、以下の種類があります。
専門的な知見を要するため投資家にあまり知られていないタイプです。投資機会は少なく、クレジット市場全般との相関性が低いというメリットを持ち、以下の種類があります。
貸し倒れによる回収見込みのない損失。
同じことを銀行業界では「write-off」、クレジット業界では「charge-off」といいます。
=デフォルト率×(1-回収率)。
=直近四半期の金利収入×4(年率換算)÷直近四半期中の平均債権価額。
ダイレクト・レンディングの投資家に好まれる投資尺度です。
債権価額は、取得価額や元本金額でなく、公正価値を使用します。
公正価値は予想される貸倒損をすでに織り込み済みです。
借り手が利息と元本の片方または両方を支払えなくなり債務不履行となる比率。
債務不履行になると貸し手は担保の差し押さえなどの救済措置を取ります。
一時的で特殊な要因を取り除いたEBITDA。
ダイレクト・レンディングのレンダーは、「EBITDAの何倍か」という基準で融資のリスクを測るため、企業はEBITDAが大きいほど有利に借り入れを行うことができます。借り手企業は、例えば事業拡大費用などでEBITDAが減っている場合、そうした特殊要因を調整してEBITDAをレンダーに提示しようとします。レンダーはこうした調整の妥当性を見極めなければなりません。
融資のアレンジャーが後日、シンジケーションを成功させるために融資条件を変更するリスク。
借り手企業とアレンジャーの間の契約にフレックス条項がある場合、アレンジャーはシンジケーションに失敗するリスクを減らせますが、その一方で借り手企業にとっては融資条件が悪化する可能性があるため、こうしたリスクを嫌がります。
ダイレクト・レンディングには、このリスクがありません。
ファンドが銀行借入れなどによってレバレッジを使う場合、そうした負債とファンドの持ち分(=NAV)の合計。
企業の貸借対照表の「total asset」に相当します。
「performance fee」、「carry」、「carried interest」とも言います。
貸付契約に基づく利息収入。(貸付時に元本の割引が行われれば、それも含む。)
「yield」、「lending income」、「lending income return」とも言うこともあります。
ダイレクト・レンディングのレバレッジの比率は次の2つがあります。
ちなみに「EBITDA」の発音は「イービッダ」(íː-bit-dɑ́)で、以下のリンクの中のスピーカー記号をクリックすれば音が聞けます。
評価額が最高だった時から最低に落ち込んだ時までの差。パーセントで表し、累積値であり、年率換算されません。リスクの計測に使われます。
リスクを測るもう一つの方法に標準偏差があります。標準偏差は平均から上回ったり下回ったりをランダムに繰り返すような状況におけるリスクの計測に向いています。しかし、2008年~2009年の世界金融危機時のように一方的に下落が続く状況では、標準偏差はリスクを過小評価してしまうため、最大ドローダウンの方がリスクの計測に向いています。
「ドローダウン」という英語は、私募ファンドの「投資家がキャピタルコールを受けて出資金を払い込むこと」という全く別の意味もあります。
EBITDAが1千万~1億ドルの企業を対象とする市場。
資産運用会社が企業に貸付を行う際、オリジネーション、アレンジメント、債権の管理・回収業務の対価として、貸付元本を割り引いて資金を提供すること。
割引分は運用会社の収入になり、会計上、貸出時に収入として計上されるか、アキュムレーションにより期間案分で益金計上されます。
融資手数料はアップフロント・フィー(upfront fee)の形を取ることもあります。
ソーシング(案件発掘)およびローンの組成を行うこと。
四半期ごとに現金で利息を払う代わりに、借入残高を増額させることです。短期的にフリーキャッシュフローに限りのある借り手によって利用されます。
同じPIKでも、現金の代わりに証券を支給する「PIK債」は、「現物支払有価証券(PIK債)」と訳した方がピンとくると思います。
ちなみに、不動産抵当証券担保債券(CMO)の一種である「Z-bond/Z-tranche/Accrual Bond/
Accretion Bond」も利払いの代わりに残存元本を増やす点が似ています。
プライベート・エクイティと同様、ダイレクト・レンディングのファンドにも優先リターンが設定されることがあります。
「Hurdle」、「Hurdle rate」とも言います。
そのほとんどが損失であり、当該債権の債務不履行や回収の結果、貸し倒れ償却になった部分。
債務不履行となった貸出残高のうち、回収できた部分の比率。
投資家が高リスクの資産から低リスクの資産へ資金を移動させること。
米国の国債や政府機関債はリスクオフ資産、ダイレクト・レンディングはリスクオン資産です。
どんなに分散投資しても無くならない諸々のリスクに対する見返りとして投資家が受け取るリターン。総収益率の中で無リスク金利を上回る部分。なぜか「リターン・プレミアム」と言いません。
デット投資では、リスク・プレミアム=「イールド・スプレッド」です。
「alternative beta」ということもあります。
ダイレクト・レンディングに特有のリスクは、
弁済順位が劣後債務、メザニン、エクイティより先になる債権。
たとえシニアでも、破産時には担保権がまず行使されてしまうため、多くの場合シニアかつ担保付きの債権となります。(=senior secured debt。)
担保は借り手となる事業会社の有形固定資産です。
関連会社等のために実物資産の担保を提供したり短期的に運転資本を融資したりすること。
欧州の資産運用会社はファンドのためにスリーブを提供することがあります。
プライベート・エクイティ運用会社が投資家として支配権を握っている会社。
「Non-sponsored company」は同族経営の場合などです。
通常のシニアよりも負債/EBITDA倍率が高い代わりに貸出金利も高くなるローン。
「Senior stretch」や「stretched」と書かれることもあります。
=「インカム・リターン」+「未実現損益」+「実現損益」。
投資の定石は、「インカム・リターンの最大化」と「未実現/実現損の最小化」とされています。
貸出案件のリスクを評価し、それに応じて貸出金利などを決定すること。
理論的には期待デフォルト頻度とデフォルト時回収率で決まりますが、実際には負債/EBITDA倍率に基づく大手格付け会社の格付け、その格付けに対応する市中の貸出金利などが活用されます。
シニアとメザニンを一つにした債務であり、特に欧州で普及。
大まかに3種類あり、
いずれにしても事業会社にとって借入契約が一つになるため交渉の負担が軽くなります。
ちなみに「tranche」はフランス語からきていますが、英語の発音は、トランチ(træntʃ)となり、イギリスなどでトランシ(trɑːnʃ)という人もいるようです。
貸付債権の価値の変化部分。市場全体のスプレッドの推移や当該債権の信用リスクを反映し、貸倒引当金のようなもの。
ミドル・マーケットのディレクト・レンディングは滅多に売買されず、満期まで保有されることが多いため、多くの場合、外部評価機関が年に1度評価を行い、融資者自らが四半期毎に評価を行います。
この評価はFAS157に基づく公正価値です。
予想通りに貸し倒れになると、未実現損は実現損になります。
債務不履行時にレンダーが取る手段。
事業が好調でも資金繰りが苦しい場合は救済措置としてフィーや金利の引上げを行います。
事業そのものに問題がある場合はレンダーの知見によって改善策を講じ、資産の投げ売りという最悪の事態を回避しようとします。
多くの場合、ダイレクト・レンディングの償還期限は5年ですが、借り換え、期限前償還、コーポレートアクションにより、過去の保有期間の平均は3年です。
公正価格で取得したダイレクト・レンディングを3年後に元本償還すると仮定して計算します。
公正価格が元本を下回る部分を会計上アキュムレーションするため、利回りが現行利回りよりも良くなります。
この方法は、「償還までの貸し倒れがゼロ」と仮定してしまう点に難がありますが、他の商品と比較するために用いられます。
参考:
JD Supra, LLC, Stretching Leverage: Holdco PIK Financing Instruments.
Shawn Munday, et al. "Performance of Private Credit Funds: A First Look." The Journal of Alternative
Investments, (Fall 2018).
Stephen L. Nesbitt, "Private Debt; Opportunities in Corporate Direct Lending," John Wiley & Sons, Inc., 2019.
“If You Hope to Be Part of a M&A Deal, You'd Better Learn About Addbacks”
Investopedia: Credit Sleeve.
Investopedia: Takeout.
Senior debt - Wikipedia: https://en.wikipedia.org/wiki/Senior_debt
Thomson Reuters Practical Law, Glossary, Market flex
PEI Media, "Time to consider financing with 'senior stretch'?"
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構「インカム投資に関する調査研究」2018年3月
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