ヘッジファンドは売買タイミングを予測できるのか?

ヘッジ・ファンドは情報力と柔軟性を誇る投資のプロとされています。

しかし彼らの高額な報酬は、リスク調整後の運用成績によって正当化できるのでしょうか?

またヘッジ・ファンドはマクロ経済の変化にリアルタイムに対応し、エクスポージャーを調整できているのでしょうか?

原題:「Can Hedge Funds Time the Market?」

著者:Michael W. Brandt、Federico Nucera、Giorgio Valente

掲載誌:International Review of Finance 2017年12月29日

 

分析の手順

  1. マクロ経済の状況の変化に対する各ヘッジ・ファンドの感応度を測定する。
  2. 測定された感応度によってヘッジ・ファンドをグループに分け、経済データにより強く反応するファンドのグループの運用成績がアウトパフォームするかを評価する。

 

観測期間:1994年1月~2014年12月

 

データ

ヘッジファンドのデータ

  • ヘッジファンド・リサーチ(HFR)のデータベースにある株式ヘッジファンド2224 本。
  • サバイバーシップバイアスに対処するため「HFR Dead Funds(閉鎖ファンド)」も含められる。

 

マクロ経済状況の指標

Beber et al.のナウキャスティング(nowcasting)の手法によって、米国で発表された生産高、雇用、景況感に関するリアルタイムのニュースを集約した経済成長指標。(Beber et al.によるとこの指標はGDPを予想し、金融市場と相関がある。)

 

リスク要因: Fung and Hsieh (2001, 2004)の研究と同じ。

 

分析方法:  Ferson and Schadt (1996)とChristopherson et al. の条件付きベータ・モデル

 

回帰式の左辺:  ファンドの翌月の超過収益率

回帰式の右辺

  • 株式市場の超過収益
  • 株式市場の超過収益 × 経済成長指標
  • 無リスク利子率 × リスク要因
 

結論

経済データの発表に対するエクポージャーの感応度が有意に正の(つまり先見の明があった)ファンドは 約17%、負の(つまり先読みできなかった)ファンドは 約9% あった。

最も景気に連動(プロシクリカル)してエクポージャーを増やしたファンドは、景気変動にあまり動じない、あるいは逆(カウンターシクリカル)に投資したファンドよりも、リスク調整後のアルファが年率5.5%上回っていた。

リーマンショックの影響を取り除くため、1997年1月~2007年12月の期間に限って分析した結果、景気連動型のファンドの運用成績の差は、さらに大きくなった。

また閉鎖されたファンドをデータから取り除いても差異は消えなかった。

 

私の感想

この論文のおかげで、やはりマクロ経済の分析は投資の基礎であることが確認できました。

 
 

 

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