格付け機関は、ストラクチャードファイナンス商品に対して不正確で偏った格付けを与えていると、リーマンショック以来厳しく批判されています。それでは、こうした格付けは、いったいどの程度スプレッドとリターンに影響を及ぼすものなのでしょうか?
原題:「Do credit ratings affect spread and return? A study of structured finance products」
著者:Fernando Moreira、Sheng Zhao
掲載紙:International Journal of Finance & Economics 2018年1月29日
データ
分析方法
変数
結論
ABSの格付けの影響は、流通市場よりも発行市場の方に強く表れています。
発行市場において低い格付けは高いスプレッド(高い発行価格)につながります。
しかし流通市場では、投資家の関心事はむしろ他の商品とのリターンの比較になります。流通中のABSに関しては、格付けのアウトルックと実際の見直しが一致した場合にのみ、格付けの発表から1日後にリターンに影響が出ますが、その後すぐに、格付けの影響は薄れます。
私の感想
相関関係は因果関係ではないと耳にタコができるほど聞かされてきたので、「因果関係」を追求するというくだりを見たとき興奮しました。
しかし結局、SEMは因果関係を証明するものではなく、「因果関係が無いとはいえない」という、統計学でよくあるモヤモヤした終わり方をする分析方法でした。
少なくとも相関を測っているので、それだけでも良かったです。格付けというものは発行時は影響大で、流通してからは影響が薄くなるとは、ちょっと意外な結論でした。