銀行と保険会社は異なるリスクに晒されていますが、投資先の資産クラスに重複があります。それなのに、これまで業態の垣根を越えた研究はほとんどありませんでした。金融コングロマリットが規制アービトラージや規制回避を行なう機会を作らないように整合性が必要です。現行および新たに導入されるバーゼルIIIとソルベンシーIIはどれほど整合しているでしょうか?本研究はそれを定量的に検証します。
原題:
Basel III Versus Solvency II: An Analysis of Regulatory Consistency Under the New Capital Standards
著者:Daniela Laas、Caroline Franziska Siegel
掲載紙:The Journal of Risk and Insurance 2016年6月9日
比較の方法
架空のバランスシートを想定し、それが銀行だった場合と保険会社だった場合で所要自己資本がどうなるかを計算する。
資産サイドの前提
欧州の大手保険会社の平均的な資産構成とする。
負債サイドの前提
5回目の定量的影響調査(QIS:Quantitative Impact Study)における経済価値ベースの貸借対照表に基づく。
その他の前提
クーポン・レート、金利、株価、デュレーション、その他の数値や割合は保守的な数値、業界の平均値、代表的な指標、先行研究で使われたものとする。
結論
私の個人的な感想
私は金融翻訳者なので、バーゼル関連の翻訳もするし、ソルベンシー関連の翻訳もします。この論文のおかげで、両者の関連がよりよく理解でき、ありがたいです。
本論文は石橋を叩いて渡るように前提をていねいに積み上げて計算し、ロバストな結論に至っています。スキのない分析とはこういうことなのでしょう。