ベンチャー企業の経営チームの特徴と
パフォーマンスに関する分析

「経営陣の資質と構成によって大企業の業績がある程度予測できる」という学説が実証されています。この学説はベンチャーにも当てはまるのでしょうか?それを検証するのが本研究のねらいです。

原題:「Entrepreneurial Team Composition Characteristics and New Venture Performance: A Meta-Analysis」

著者: Linlin Jin, Kr isten Madison, Nils D. Kraiczy, Franz W. Kellermanns, T. Russell Crook, Jing Xi

出版元 SAGE Publications Inc.

2017年9月

 

 

研究方法

インターネットのデータベース、業界紙、カンファレンスの資料、論文の参照から過去の研究を探し、合計で8,892件の観測データを含む52本の研究のメタ分析を行なう。

従属変数

  1. 収益性(総資産利益率、投資利益率、売上高当期純利益率、その他報告された数値)
  2. 成長率(売上高、従業員数、市場シェア)
 
独立変数
  1. 経営陣メンバーが持つ業界経験、起業経験、勤務経験
  2. 経営陣の構成に多様性があるか(性別、年齢、経験した職務の耐用性をHerfindal–Hirschman指数またはBlau指数で測る)
  3. 経営陣のメンバーの数
  • 標本誤差と測定誤差を調整し、Q統計量により信頼区間を測る

結論

その1.経験豊かな経営陣は成功する確率が高い。

    (有意水準1%)

その2.経営陣が多様であるほど業績が良い。

     その理由はおそらく多様なメンバーが多様な状況に対応できるため。

    (有意水準5%)

その3.経営陣の人数が多いほど、業績が良い。

     その理由はおそらく、人数が多いほど、たくさんの情報を処理できるため。

    (有意水準1%)

その4.ローテク企業では、経営陣の経験が豊かなほど、業績が良い。

  ハイテク企業は複雑な情報を扱うため、経験豊かなメンバーを必要とすると思われたが、実証分析では結論が出なかった。

 

その5.経営陣の多様性と業績の相関性は、ハイテク企業とローテク企業の間で大した違いがない。

 ハイテク企業は多種多様な情報を処理するため、多様な経営陣を必要とすると考えられたが、実証分析で結論は出なかった。

 

今後の課題

経営メンバーの性格の分析はまだである。また、ベンチャーの95%は5年以内に倒産するのに、本研究の対象は生き残ったベンチャーのみである。


 

 

個人的な感想

ベンチャーは1~2人の大学生が自宅のガレージで始める、という印象を持っていたのですが、実際に成功した経営陣は、人数が多く、様々な経歴を持つ老若男女という結論でした。この研究はそれなりに面白いのですが、結果的に成功した企業のみをサンプルに含んでいることが大きな欠点かと思います。本当に予測したいのはベンチャー企業がまだ小さいときの将来性ではないでしょうか。

「Q統計量」のことを初めて知りました。統計学は奥が深いですね。

 
 
 
 

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